テレビはコンテンツを映す物か?広告を流す物か?

いえいえ、昔も今も、まずは人を集めるモノになりたいのです。
物より思い出、モノコト論はさておき、下の本を読みました。

とその前に、ここでいう"テレビ"っていうのは、テレビ受信機・モニタのようなハードを指すのではなく、放送や映像としてのテレビです。
自分はテレビハード(受信する側)を開発するのが現在の仕事で、直接コンテンツ(と放送もひとくくりにするともしや怒られるのかもしれませんが・・・)側に関わることはないのですが、コンテンツ無しには只の板*1と呼ばれる*2物を作っているからには、最近の動向は気になって気になって、もやもや・・・なのです。
もともとネット配信自体は日本でもアクトビラは始まっていたものの、あまり大きなチャンネルになる様子も見られず、最近になって会社でのネット配信対応のチームの話や、アメリカやヨーロッパでの配信の話題の方が盛り上がっているのを聞いて気になっている状況でした。なので一度状況を全体的に知るにはちょうど良い本かと思いまして。

ネットテレビの衝撃 ―20XX年のコンテンツビジネス

ネットテレビの衝撃 ―20XX年のコンテンツビジネス

さてさて、こちらの本についてですが、まずはアメリカでの動きをメインに最近のテレビ(もとい映画等のコンテンツ業界)の動きや、インターネットによる配信の動向についてが簡潔にまとめられています。
日本にいると、おそらくはあまり海外のメディア配信状況に触れることはないので、かなり参考になるかと思います。自分も入社していろいろ聞くまでは日本のテレビ関連の状況がほかの国と比べても特殊ということは知りませんでしたが・・・。

テレビには、3種類しかビジネスモデルがありません。(1)マスメディアとして広告収益をあげるタイプ、(2)衛星、ケーブルテレビやIPTVを通じて有料で番組を見せるビジネス、そして(3)NHKやイギリスのBBCのような公共放送モデルの3つです。
日本には民放がたくさんあって、テレビにお金を払うのは、バカらしいと感じている人もたくさんいると思いますが、世界で広告モデルのテレビ市場が有料放送よりも大きいのは日本くらいです。
ネットテレビの衝撃 第6章 テレビは「いまのテレビとは別物になる」 p.198

なお、アメリカの放送は、ハリウッド映画などの映像コンテンツビジネスの拡大が引っ張っていた*3(3)がメインなのに対し、特に日本の地上波は視聴率を集めることで広告の収入を得る(1)のようなモデルがメインでした。なので、アメリカはコンテンツホルダーがどう配信するか、また配信先を広げて収入とすることはできないか、というのをより熱心に模索している印象です。ここ最近のネット配信で新しいサービスがアメリカから始まっているのはこのあたりが背景にもあるのかも、と思います。対して日本はテレビが人気を集めて、多くの視聴者を得た中での広告ビジネスが多くなっていました。
映像というコンテンツを作って流しているのは同じですが、直接コンテンツを売ろうと考えるか、広告収入を得るために多くの人にみてもらう映像を作ろう、というのは構造的にも大きな違いを生み出していたようです。
ところで日本ではこの広告放送モデルのおかげで放送は基本タダでみれるモノ、という意識があるので、テープやHDDのレコーダ、そして録画対応のテレビが多く使われているのかな、という印象もあります。みんな自前の機械にせっせと録画して同じデータをため込んでいる、というのも考えてみると異様な感もありますが、この状況だと1番組いくら、な配信ビジネスと単純に比較しちゃうと配信側の方が煩雑に見られるのかな、という気もします。


さてさて、ネットによる状況の変化については第3章「アマチュアに撃破されるプロフェッショナルコンテンツ」という章にて、CGMの盛り上がり、そしてSNSが紹介されています。目次のみ引用すると、

  • メディアのコングロマリット化が進んだアメリ
  • 映画を「パイプライン」に流して儲ける!
  • ユーチューブとフールー、どちらが価値があるか
  • CDはプロモーショナルツール、ライブとグッズで儲ける音楽業界
  • ブログは無料で楽しい最高のエンタメコンテンツ
  • 音楽ゲーム「ロックバンド」のビジネスモデル
  • キラーコンテンツの最終形、ジンガに注目

確かに、コンテンツを切り売りする、という観点で見れば音楽業界の変化は、映画業界の変化を先取りしてると見ることもできそうです。特定バンドやアーティストのライブに最終的に人が集まる、というところを狙うのを映画でも全く同じように当てはめることはできませんが。とはいえ、SNSの例でもあるように広告でもコンテンツビジネスでも、やはり人が集まってくるところを狙ってのビジネスというのが今後も引き続きポイントになりそうです。Amazonが出てきたときにはみんなロングテール、ポニーテール、わーい!って言ってたのになー。
じゃなくってすみません、やはりテレビも広告ビジネスにせよコンテンツ単位で売るビジネスをするにしても、映像を使って人を引き集め続けなければならない、というのが大きな課題でしょうか。


やっぱりもやもや感をうまく述べることができないのですが、ほか関連しそうなネット上の記事をいくつか以下に並べてみました。

【専門記者が振り返る】ネットとテレビ,この1年――土台が固まり,2011年に飛躍へ | 日経 xTECH(クロステック)
【ネット・テレビWars1】動揺するハリウッド,台頭する低価格VOD | 日経 xTECH(クロステック)
【ネット・テレビWars2】進化するテレビ,草の根が開く新メディア | 日経 xTECH(クロステック)
【ネット・テレビWars3】消えるテレビ,迫る主役交代のとき | 日経 xTECH(クロステック)
【本田雅一のAVTrends】地デジ化完了後のコンテンツ配信を考える - AV Watch
あと日本の放送業界側のことはこちらの雑誌でも変化の状況がまとめられてます。まだじっくり読めてないので後ほど・・・。

週刊 ダイヤモンド 2011年 1/15号 [雑誌]

週刊 ダイヤモンド 2011年 1/15号 [雑誌]

すでに数多くの人が書いたり述べられているように、テレビ・動画配信関連は2010〜2011年の動きで大きな節目になりそうなので、ハードメーカ側の一員としてしっかりみつつ、可能な限り動いていきたいと思います。

モノコト論みたいになりますが、ぼんやりあたりまえのようにあるモノだったのでテレビを買っていただいていた、というところから、より具体的にあれを見たいといった目的をふまえて選んでいただくテレビになるかもしれません。その場合パソコンやタブレット、携帯のような現状よりユーザには身近になっている機械の一機能ではなく、別途テレビという製品を買っていただくには何がいるのか、単に大きくて明るくて綺麗、というだけでアピールになるのか、より真剣に悩んでいかなければなりそうです。
あー、明るくしめられない!

*1:最近は箱より板と呼んだ方が良いですよね!

*2:最近テレビ見ないし、もうテレビなくても良いや〜といったコメントへの返しに悩んでたり

*3:なので有料のケーブルテレビなども多かったのですかね